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ある日のデート [Short Story]

A: ねぇ、ねぇ、ねぇ。これって、ちょっと前に付き合っていた彼のブログなんだけれど。

A は、携帯電話でアクセスしたブログのサイトを B にみせた。

B: へぇ、携帯用のサイトが用意されているんですね。ふーん...。

B はスクロールするために上下キーを操作した。キーをクリックするたびに、カチカチ、と小さな音がして、A の耳にもその音がはっきりと聞こえた。

A と B は結婚紹介センターで知り合った。お互いに携帯電話でメールの交換をしていたのだが、B が食事でもどうかなとに誘い、今日初めて出会ったのだ。A は、あまり気乗りせずに来たのだが、色々話をしていて、気が合いそうかな、と思い始めた。食事の場所が、百貨店のレストランフロアにあるフレンチのレストランであったことも影響しているようだ、とA は感じていた。ムードに流されそうな性格もあるのだが、時々利用する百貨店なのにこんなお店があることを今日初めて知った、という意外性が、今抱いている印象を引っ張っているのかな、まぁ、ワインを飲んで気持ち良くなっているから、どんな僅かなきっかけでも今の心境になるんだろうけれど...、と感じていた。

A と B は、仕事のこととか、休みをどう過ごしているとか、そういった話題を交わしながら食事を進めていたのだが、そのうちに、理想の相手とか、紹介センターで出会った相手とかの話題に移っていった。その時に A は、以前同じような形でデートをした相手から教えてもらったブログを B に見せたのだった。B はブログを運営しているサービス会社に勤めていて、ブログについて精通していると、と話していたので、A にとって曰くつきのブログを見せることにしたのだ。というのも、A は、そのデートで見せてもらったブログを、内容があまりにも一方的な情報発信で面白みがないと感じたので、そのように話したのだが、そのことがきっかけに相手の機嫌が悪くなり、そのデートの後に断りのメールが入り別れたのだった。自分としては釈然とせず、自分の価値観を B に確かめてみようと考えたのだった。

A: コメントなんて1つも入っていないでしょ。文章も少ないし、一方的だし、コミュニケーション悪そぉ。
B: そんなもんじゃないのかなぁ。ブログって、その人の日記なんですし。その記事に共感した人がコメントを書くわけですから。でも、きれいな写真が貼り付けてあるから、見ている人はいるんじゃないかな。
A: ふーん、そんなものなの...??
B: ブログの仕事をしていて、色々な人のブログをみるから分かるんですけれど、こんな小さな世界によくまぁのめり込んでくれるなぁ、なんて思いますよ。どう考えても健康的でないでしょ。
A: ...。
B: とりとめもなく書いて、ある程度のところで留めておいておくのがベストじゃないんですかね。このブログもその程度じゃないですか。サービスをする側としては、広告費を落としてくれるような記事を書いていただけると大変ありがたいのですけれど(笑)。
A. ふーん。
B: ところで、ジャズなんて興味ありませんか。来月末に、私がいつも聞いているプレイヤーが来日するんですけれど、コンサートがあるんですよね。ご一緒できませんか。

相手のペースに流されていく A だった。

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コメント 2

rira

前の彼の・・・話題を出すって珍しい☆
あ・・・お話なのですね?(^^ゞ
by rira (2008-05-04 12:10) 

code-a

お話です。リアルでしたか...??
by code-a (2008-05-04 14:07) 

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