SSブログ

ある朝 [Short Story]

2008年6月6日のニュース。

カーソルを操作してニュースビデオの一覧を表示させた。スクロールバーが表示されるほどの項目が並び始めた。何を見ればよいのやら...、と思い、一覧表の右隣に配置されている、一覧のビデオを順に再生できるボタンをクリックした。ビデオが流れ始めた。政治のニュースのようで、その日に執り行われた閣議では参加した閣僚がかりゆしウェアを着て臨んだ、とか。クールビズなる軽装で過ごすというキャンペーンを呼びかける内容だということが、女性アナウンサーが原稿を読み終えた後に男性アナウンサーと話す会話から理解できた。

当時は、まだ暑いといっても、開襟した服装でしのげるような状況だったんだ、と思った。ここ最近、昔のニュースビデオを見ていて、時間をつぶしているのだ。

「あなた、そろそろ時間じゃないの。」

妻が私に声をかけた。

時計は、そろそろ会社へ向かう時間だということを告げていた。急がないとまた間に合わなくなる。そう思いながら、PCをスタンバイモードに切り替えて玄関先へ向うことにした。玄関前では妻が繋ぎの服を持って待っていた。

薄着の服装で良かった当時の人は、今の我々を見るとどう感じるのだろうか。当時の最高気温が40度を超えた辺りで、1年のうちに数日あるかないかの極めて稀なケースの天気だったという。その頃に政府をあげて取り組んだ研究成果によれば、スーパーコンピュータでシミュレートした2100年前後の気温は、2000年前後と比較して3、4度上昇する、というものだった。

今となっては、お笑いネタだ。50年足らずで気温は、その10倍ほどまで上昇しまったのだから。外出する際には、全身がすっぽり入る温度調整つきのスーツを着なければならない。まるで宇宙服のようなのだが、その通りだ。着るにも手助けが必要で、ひとりでは着れない。

今日も宇宙服を着て出社しなければならない。そういえば、当時、朝に放送しているあるニュース番組の終わりは、「今日もお元気で!」というアナウンサーの掛け声で終わるんだっけ。今の私は、宇宙服を着て、命懸けで外に出ている。あの掛け声を思い返すと、何となくむなしさを感じずにはいられない。
nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

あじさい、もうすぐでしょ...Cabos ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。