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デジタル放送の遅延 [Short Story]

A: 先輩、長野で行われていた北京オリンピックの聖火リレーは無事に終了しましたね。
B: そうだねぇ。
A: 「Free Tibet」を叫ぶ若者がリレーの中に物を投げ込んだり突っ込んだりしていましたけれど、大きな暴動に発展することなく、終わっちゃいましたね。私は、大きな事件にでもなるかのと思いましたよ。
B: 首相がモスクワへ向かっている状況だったから、政府は是が非でもそういったことにはしたくなかったはずだよ。現に、90名以上の警官がリレーを囲んで走っていたわけだから。
A: そうですよねぇ。日本だったら、リレーがそのまま生中継されて、誰でもリアルタイムに状況を確認できるんですけれど、中国だったらそんなことはできないでしょうね。放送局の中で中継映像を確認してから配信するって言いますから。都合の悪い映像は別のものに差し替えるそうですね。
B: そうらしいよ。でも...、君は知らないんだなぁ。
A: ...、何のことですか。
B: いや...、でも、日本では無事に終わっても、チベットが聖火リレーのコースに入っているようだから、今後もニュースはにぎやかだろうね。
A: そうですね...。でも、先輩、知らないって何のことですか。
B: う~ん...、ここだけの話なんだが...。
A: ...。
B: デジタル放送って遅延しているだろ。
A: えぇ、1秒以上遅延していますよね。チャネルを切り替えしても反応が遅いから、アナログ放送の時のようにはいかないですよね。
B: 実は、その遅延にはからくりがあるんだ。政府は何を考えたのか、ずる賢いやつがいるもんだよ、デジタル放送というシステムが全面的に切り替わるタイミングを利用してね、テレビ放送にも映倫のような検閲システムが必要だ、って言い出したんだ。特に生中継の映像は衝撃的なものを含む場合がある、とか言って、映像を選別できるシステムの構築を考えたんだよね。注目すべきところは、このシステムが自動化されているって言うところなんだ。人間が介在していると、世論からも、国際的にも、批判を浴びるのは必死。だから、コンピュータが選別したらいいだろう、って。
A: でも、そんなこと、物理的にできないですよ。現在あるコンピュータの技術を使っても処理量的に不可能です。
B: それは、技術に詳しい関係者が同じことを言っていたよ。でも、実現することの方が勝っていてね、いつになったら実現できそうなのか、どのくらいのお金をかければどの程度のことができるのか、ということを検証し始めたんだ。そうすると、2010年頃にはできそうだ、という見積もりが出来上がったんだよ。でも、瞬時にはできない、という条件付きでね。
A: つまり、その見積もりで出たのが、今の遅延ってことですか。
B: そう。
A: アナログ停波が2011年7月24日ですから、その頃にはシステムが出来上がっているんですか。
B: そうみたいだね。
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